安保関連法に反対する被災三県大学教員有志の会
試練のときが来た――私たちは被災地から声をあげ続ける
試練の時が来た。安保関連法案が「法」となったという理由で、それを黙認するのか。そうではなく、自らの知性と良識に従い、「安保関連法」を廃止すべく声を上げ続けるのか。この社会に生きる私たち市民は今、厳しく判断を問われている。
旧憲法の下にあった大日本帝国は植民地支配と戦争により、アジア諸国をはじめとする世界の国々の人々の生命を奪い、その平和と幸福な暮らし、そして人間の尊厳を奪った。当時、多くの日本人はこの事実を直視することのないまま、自らもまた戦争によってかけがえのないものを失った。現憲法は、何よりもこうした加害と被害の歴史への反省の上に成り立っている。
現憲法の理念には、日本の人々に対して民主的な社会の下で、自由と平等、そして幸福追求の権利を保障し、国家がその権利を奪うことを許さないという意志が刻まれている。また、他国に対する深刻な暴力を繰り返さず、日本が戦争の被害を再び受けることのない世界を構築しようとする意志が刻まれている。この意味で、現憲法は日本に生きる人々と世界の人々に向けた平和への約束である。今国会は、多くの専門家が違憲と認める法案を、多数決とすら言いがたい強引な手法により「採決」することで、その憲法を根幹において否定した。今国会は、日本に生きる人々のみならず、世界の人々に対しても、その約束を踏みにじったと言わねばならない。
3.11以降、津波浸水地域の住民や、原発避難者など、今も多くの人が非常事態の中にある。その被災者たちの日常を回復しようとする望みを支え、また被災者と支援者の結びつきを支えているのもまた、平和と幸福追求を権利として保障する現憲法の理念に他ならない。今国会による憲法の否定は、3.11以降、日常が脅かされている人々を、さらなる危機にさらすものである。それはまた、貧困や差別によって日常を脅かされている人々をも危機にさらすものである。
こうした事態にあって私たちは、世界の人々と共に、そして困難な環境の中に生きている人々と共に、引き続き、「安保関連法」に対して異議を唱え続けないではいられない。
過去の加害と被害の現実を見据え、現在、困難な生を歩んでいる人々の現実を見据え、その上で未来を切り開こうとする知性と良識が、今、試練にかけられている。しかしわたしたちは安保関連法案に対するこの間の反対運動をとおして、その知性と良識が鍛え直され、また自発性に基づく市民間のあらたな連帯が生まれてきたことも知っている。その連帯を力に、私たちは試練を乗り越えるべく、今日この日からまた新たな一歩を踏み出す。
2015年9月24日
安保関連法案に反対する被災三県大学教員有志の会