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私たちは安保関連法の廃止を求める

 

 2015年9月19日未明、自由民主党、公明党、およびそれに賛同した野党3党(日本を元気にする党、次世代の党、新党改革)は、参議院において安保関連法案を可決、成立させた。私たちは、このことに抗議し、断固として法律の廃止を求める。

 

 私たちが廃止を求めるのは、何よりもまず、安保関連法が憲法に違反しているおそれが大きいからである。どのような法律も憲法に則って、またその許す範囲内で制定されなければならない。この立憲主義の原則が守られなければ、国政、ひいては社会そのものが、時の政権の恣意によって歪められかねないからである。安保関連法の成立は、この原則が踏みにじられたことを意味する。未来に何が起こるのかを予見し、現在において取りうる方法を考えることが学者の使命の一つである以上、私たちは今、安保関連法の廃止を求めないわけにはいかない。

 

 私たちが廃止を求めるのは、さらに、それが多くの国民の声を無視して制定されたものだからである。可決前の段階において、国民の多くが安保関連法(案)に反対していたことは明らかであった。国のあり方を決めるのは、一部の権力者ではなく、一般国民であるとするのが民主主義である。民主主義と市民の良識は相互に深い関係をもっている。この意味で、民主主義を否定することは、とりもなおさず市民の良識を否定することに他ならない。学問が市民の良識との対話のうえに成り立つものである以上,この点からも、私たちは安保関連法の廃止を求めないわけにはいかない。

 

 私たちが廃止を求めるのは、最後に、私たちが被災三県に生きている以上、命の尊さを訴えることが私たちの責任であると考えているからである。東日本大震災の際、この地では一瞬のうちに、無数の命が犠牲になった。あの日、この地のいたるところで、死なないでくれ、という痛切な願いが発せられた。この意味で、この地は、命への痛切な願いが交錯した場所である。同時に、この地は、多くの人がその願いが通じない現実に狼狽し、悲嘆にくれなければならなかった場所でもある。私たちはそうした場所に生きている。このことに思いをいたすとき、私たちは命の尊さを訴え続けないではいられない。それが私たちに課せられた責任であると信じる。一方、戦争は命を尊ぶ態度の対極にあり、安保関連法はその戦争への道を開くものである。したがって、この地に生きる私たちは自らの責任として、この法律の廃止を求めないわけにはいかない。

 

 私たちは、学者としての使命に鑑み、市民の良識と共に、安保関連法の廃止を求める。そうすることは、私たちにとって、失われてしまった命と現にある命が私たちに課しているところの責任を果たすことに他ならない。

 

2015年11月16日

安保関連法に反対する被災三県大学教員有志の会

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